2013年3月 保護者セミナー報告

日時
平成25年3月23日(土)
演題
ひきこもる意味を考えた対応
講師
福井大学保健管理センター 細田憲一氏
報告内容

平成24年度最後の親サポは、福井大学の細田憲一先生をお迎えし、「ひきこもる意味」に焦点をあて、「ひきこもり」を経験したひとつの事例を通して、周囲がどのように本人の状態を理解し、関わっていくかをお話しされました。

まず、先生はこれまで不登校やひきこもり、摂食障害などの状態にある方との数多くのカウンセリングで、その当事者の方からたいへん多くのことを学び、考える機会を得たと話されました。

過去に「ひきこもり」を経験した方は、「新たな自分を創り出す」、「自分を受け入れ、肯定できるようになった」、「嫌なことを断ることができる」、「自分はこういう人間だと自覚した」など、ひきこもることで自分自身と向き合い、大人の心を生み出す体験をしています。

「人から評価されることで自分の存在を維持すること」にとらわれた結果、大人の心に成長するのに大切な「自分らしく生きたい」という気持ちを育む機会を失います。「ひきこもり」の期間は、ちょうど「さなぎ」の状態で、「成虫」になる過程の大切な時期です。親や家族などは「ひきこもり」をマイナスのイメージでとらえ、どうしても過剰に反応したり、関わろうとしてしまいがちです。

先生は、「ひきこもり」は大人の心を生み出す時期であり、本人なりの自己像を得るための大切な時期であることを説明したうえで、実際の「ひきこもり」の事例から本人と家族の様子、家族の気持ちを紹介し、望まれる周囲の対応として「本人の意思を尊重すること」、「今の状態を理解して邪魔しない気遣いをすること」、「ささやかな幸せ、小さな成功を大切にすること」の大切さをお話しになりました。

会場の親御さんからは、ひきこもっている子どもにあれこれと指示してしまったり、関わろうとして反感をもたれてしまったりと、事例でもあったようにこれまでの親子の関わりに疑問をもつなどの意見がありました。自問自答をしている期間に、周囲からあれこれと刺激があると、自分と向き合う機会を邪魔されてしまい、「自分らしい生き方」を見いだし、大人になることも阻害されてしまうようです。

日本社会がもつ特有な学歴社会では、当事者のみならず、評価を気にする大人によって、子ども自身が自己と向き合う時間をもてなくしていることに警告されました。自分が人生の主人公であるという自覚は、当事者のみならず、私たち一人ひとりにとっても大切な「問い」でもあります。

そういったことからも、「ひきこもり」の時期が自分の人生には必要だったのだと自分自身を肯定的にとらえること、失敗しながらもともに考えながらあきらめないでいくことで、「ひきこもり」のもつ本当の意味がわかるようになるのだと思います。

また、先生は、サポステの就業的自立支援プログラムは「ひきこもり」過程の往路⇒滞在期⇒帰路のうち、この帰路の時期に利用するものであり、本人をとりまく支援者として、よりよい支援ができるように努めたいと言葉を締めくくられました。私たちスタッフも、常に学び、ともに試行錯誤しながらよい支援ができるようにしていきたいと思っています。

親のためのセミナー、通称「親サポ」は保護者のかたばかりでなく、ご家族や支援者にとっても学びの場でもあります。本人をとりまく環境をよりよくするために、関心のある関係機関の方にもご参加いただきたいと思っております。

参加された皆さんの感想
「さなぎ」は突っつかれると「成虫」になれないということ、心のすみに残しておこうと思います。
親自身が成長の段階で植えつけられた価値観でこだわっている部分がないか確認する機会になりました。
ひきこもりになったことをプラスに考えて、本人のことを理解、尊重して生活したいと思います。

この記事の組織名や役職などの情報は、公開当時(2013年5月1日)のものです。予めご了承ください。